「やりたいことがない」
「好きなことがない」
これはキャリア相談をするなかで、一番多く来る悩みごとです。
私も学生のときの就活期には、「やりたいこと」がないことに関してすごく悩みました。
ズラリと並ぶ社名や業界地図を前に、そもそも「やりたいこと」がないから業界も定まらないし、職種も決まらない。
少しでも興味のあることや、苦じゃなさそうな仕事はあるけど、それが果たして自分の「やりたいこと」かはわからない…。
そんなスパイラルに陥っていました。
今回は、私がキャリア形成、敷いては生き方を考えるなかで参考にした数冊の書籍と、実体験とを織り交ぜながら、「やりたいこと」にまつわる悩みに関するひとつの「答え」を提示できたら幸いです。
- 「やりたいこと」の必要性
- 「やりたいこと」の探し方
- 「やりたいこと」がない人の職の選び方
- 今の仕事を「楽しい仕事」に変えるコツ
を中心に、最後に「やりたいことがありません」に対して私が一番言いたいメッセージを伝えられたらと思います!
「やりたいこと」なんて必要ない!
まず、「やりたいこと」がないというのは、売り手市場となった現代人特有の悩みだと思っています。
たとえば、うちの父は就職氷河期を経験し、「40社受けたうちで受かった1社」に就職していますし、一昔前は「大企業に入れればどこでも良い」という風潮もありました。それが崩壊し、「職業を選べる時代」に突入して、はじめて「やりたいことがない!」という壁にぶち当たったわけです。
しかし、キャリア形成に精通する北野唯我さんの『転職の思考法』に、よれば、人間には2パターンあると言われています。
- todo型(『コト』に重きをおく人間)…何をするのか、で物事を考える。明確な夢や目標を持っている
- being型(『状態』に重きをおく人間)…どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する
そして実は、99%の人は、「状態」に重きをおく「being型」だと言われています。
私たちには、どうしても譲れない「好きなこと」なんてないはずなのに、「やりたいことや好きなこと」というありもしない幻想を探し求めて彷徨っている状態なんです。
にも関わらず、「みんながやりたいことを見つけているのに私だけない…」と感じてしまうのは何故なのか。
それは、昨今の「好きなことを仕事にしよう!」という風潮の影響が強いのではないでしょうか。
でも、別に「やりたいこと」がなくたって楽しく働けるし、まわりで働いている人に聞いてみると、意外と「部分的に楽しい」とか「苦じゃない」とか「人間関係が好き」とか、そんな理由で働いている人がほとんどです。
それに、どうしてもやりたいことがある人は、そもそも「やりたいこと」を探そうとしません。誰に止められようが、金銭が1円も発生しなかろうが、勝手にやりますからね。
では、「やりたいこと」がない人は、どのようにして仕事を見つけていけばいいのでしょう?
1. 「やりたいこと」より「できること」を探す
「やりたいことがない」。
そんな「being型」でも、「ある程度好きなこと」を見つけることはできる、と北野唯我さんは言います。それは、「得意なこと」を「好きなこと」に近づけていく方法です。
具体的には下記の2通りの方法があります。
- 他の人から上手だと言われるが「自分ではピンとこないもの」から探す
- 普段の仕事の中で「まったくストレスを感じないこと」から探す
たとえば、私の例でいくと、「文章がうまい」とよく言われますが、自分のなかでは「こんなの誰でも書けるだろう」とずっと思っていました。それが、今のブロガーという仕事にも繋がっています。
ただ、「やりたいこと」か、と言われるとわかりません。単純に、「苦」じゃないから書いているだけです。でも、それで誰かに価値提供ができるなら良いと思っています。
他にも有名な話だと、予備校教師の林修先生は、実は塾講師になりたくてなったわけではないと語っています。
学生時代、どの塾に行っても「来週から来てよ!」と言われていたそうですが、本人はやりたくなかったため、銀行に入ったり、起業をしたりしていたそう。しかし、いろいろやってみた結果、「『やりたいこと』より『できること』」なのだと悟り、教育現場に戻ってきたのだそうです。
「やりたいかどうかの軸で考えるのを止めて、できることをやろうと思って予備校講師に徹した。30年間上手く行かなかったことや悩んだことは何一つない」ー林修
2. 「好き」になれるくらい「没頭」する
でも、あまり褒められたこともないし、「得意なこと」もよくわからないよ!という方へ。
「ホリエモン」こと堀江貴文さんの自伝とも言える著書、『ゼロ』のなかに、私が衝撃を受けた一節があります。
人はなにかに「没頭」することができたとき、その対象を好きになることができる。
スーパーマリオに没頭する小学生は、ゲームを好きになっていく。ギターに没頭する高校生は音楽を好きになっていく。読書に没頭する大学生は本を好きになっていく。そして営業に没頭する営業マンは、仕事が好きになっていく。
ここで大切なのは順番だ。
人は「仕事が好きだから、営業に没頭する」のではない。順番は逆で、「営業に没頭したから、仕事が好きになる」のだ。
これ、当たり前のことを言っているようで、結構見落としがちなポイントだと思いませんか?
たとえば、「小さいころや学生時代に何が好きだったか」ということを思い出してみると、比較的簡単に思い出せると思うんですよ。たとえば、お絵かきだったり、スポーツだったり、楽器だったり、いろいろあると思います。
でも、それらが「どうして好きだったか」と考えてみると、自然にそうなったわけではなく、圧倒的に費やしている時間が膨大であることに気が付きますよね。
私たちは飽きることなく何時間も何時間も「没頭」してやり続けた結果、「好き」になっているんです。
つまり、仕事が嫌いだと思っている人は、ただの経験不足なのだ。
裏を返せば、まずは「没頭」してみることから、「好きなこと」「やりたいこと」が見つかる可能性が高いです。
堀江さんいわく、没頭するためには「自分でルールをつくる」ことがポイントだと言います。
これは「ゲーミフィケーション(ゲーム化)」とも呼ばれる考え方です。
たとえば、退屈な事務処理だったら、「どうやったら○時間内に終わらせられるか?」と仕組みを考えたり、「絶対にこの案件で受注するぞ!」と目標を立てて試行錯誤を重ねたり。
私も何度も「ゲーミフィケーション」をして、一見つまらなそうな業務をワクワクするものへと変えて取り組んできました。ケーキ工場や文章作成のアルバイト、苦手な資料作成、単調なデータ入力…。
「やりたいことがない」と嘆くより、まずは目の前にあることに無我夢中になる努力をしてみてください。
3. 「仕事の捉えかた」を変えてみる
続いて、「やりたいこと」じゃなくても楽しく仕事をする方法です。
ディズニーランドで働く清掃キャストさん(カストーディアルキャスト)に「何を拾っているのですか?」と尋ねてみると、「星のかけらを集めています!」と答えたという有名な話があります。
同様に、村山昇さんの『働き方の哲学』のなかに、『レンガを積む3人の男』の話があります。
中世のとあるヨーロッパの町。建築現場に3人の男が働いていた。
「何をしているのか?」ときかれ、それぞれの男はこう答えた。
「レンガを積んでいる」。最初の男は言った。
2人めの男が答えて言うに、「カネ(金)を稼いでいるのさ」。
そして、3人めの男は明るく顔を上げて言ったー「後世に残る街の大聖堂を造っているんだ!」
この話からもわかるように、物事はすべて、「捉えかた」次第です。
たとえば、とある飲食店のキッチンで働いている人が、「野菜を切り、炒めて盛り付ける仕事」と認識しているか、「お客さまに笑顔を届ける仕事」と認識しているかで、仕事へのモチベーションややり甲斐は大分変わってきますよね。
そして、究極的には、仕事が楽しければ、別に「やりたいこと」じゃなくても良いですよね。だって楽しいんだから。
何なら、楽しければ「やりたいこと」に変化していく可能性だってあります。
すべての仕事は捉えかた次第で最高に楽しくもなるし、最高につまらなくもなります。
コップに入っている水の量を「たくさん入ってる」と思うのか、「ちょっとしか入っていない」と思うのか、すべてはあなた次第なんです。
4. 「自己理解」を深めて自分の「原動力」を知る
とはいえ、「捉え方」を変えるのは、そんな簡単なことではないし、短時間で変えられるものではないかもしれません。そこで、1つのワークを使って、今の仕事を楽しくする方法をご紹介します。
具体的に何が自分の原動力となるのかを知れば、今の仕事にやりがいや楽しみを見つける近道となります。
- 今までで自分がイキイキとしていた瞬間を詳しく思い出す。誰がいた?どんな気分だった?
- その瞬間の何が好きだったのかを考える。
- ①と②を繰り返し、3〜5つほど思い出す。
- ②で出た「なぜ好きなのかの理由」をリストアップする
- 仕事や私生活で同じような理由で魅力を感じた体験が他にないか考える。
- それぞれの瞬間の共通点を洗い出す。自分や環境はどんな感じだったか?
これは、『マルチ・ポテンシャライト』という本のなかにある、私の好きなワークです。
自分が何によって突き動かされるのかを知ることができれば、それを普段の私生活や仕事に応用することができます。
たとえば私の場合は、
- 「高校生のとき、お風呂のなかで読書をしているのが好きだった。エクササイズをしながら、何時間でも湯船に浸かっていられた」
- 何が好きだったのか?:健康になること、忍耐すること、ストイックに自分を高めること、並行して複数のことに取り組んでいると有意義な気持ちになれること
- 好きなこと:我慢⇄開放、時間の有効活用(時短、マルチタスク)、レベルアップ
- 仕事や私生活での体験は?:「『○時間以内に』と言われた仕事は巻きで終わらせたくなった」「資格取得の勉強をしている期間は仕事も効率良く終わった」
- 共通しているものは:スピード感のある仕事、タイムリミットがある仕事、複数のプロジェクトを横断できる環境
となります。
ここまでわかれば、あとはその環境を意図的に作り出していくだけ。
仕事の内容は変わらなくても、「自分のやる気が出る環境」があるだけで、仕事に対する向き合い方にも変化が出てきます。
6. 「やりたくないこと」から逆算する
ここまでやってみても、「自分の得意なこともわからないし、今の仕事ではやり甲斐を見出せないので、転職したい」と言うのであれば、「やりたくないこと」から逆算してみましょう。
たとえば、
- 40時間を超える残業
- ノルマのある営業
- 飲食店での接客業
など、今の仕事や今までの仕事を含む過去の経験からどうしても「やりたくないこと」を全部リストアップして、あとはそこを避けて転職をすれば、少なくとも同じ悩みにぶち当たることはないかと思います。
「やりたいこと」はわからなくても、「やりたくないこと」は経験則でわかるはずなので、そこを避けた職選びをしましょう。
5. 「やりたいこと」をつくるために行動をする
話が逸れましたが、それでもどうしても「やりたいことがほしい!」という人。
もう解決策はひとつしかありません。とにかく動け。
私がよく相談を受けるのは20〜30代くらいの方々です。というのも、私もそのくらいの年齢だからです。
でも、20代のたった10年間で果たしてどれほど世の中を知ることができるのでしょう?
米山彩香さんによる『最高の時短』では、「やりたいこと」がないと嘆く人は、「『見つからない』のではなく『探していない』」という耳が痛い一文があります。
新卒で入社したとして、社会人3年目で転職するかしないか、と考えると、20代で経験できるのはせいぜい3〜5社くらいなのではないかと思います。
でも、仕事を変えることはできなくても、環境を変えることは可能です。
付き合う人を変えてみる、あらゆる職種の人と交流できる場所に参加してみる、興味のあるイベントやセミナーに行ってみる、さまざまな本や記事を読み漁ってみる、海外に行ってみる、副業にチャレンジしてみる。
それだけでも一気に仕入れられる情報は増えますし、間接的に職業体験することもできます。
「やりたいことがない」と言うけれど、「やりたいこと」をつくるために、どれだけ行動しましたか?
自らの手と足を動かし、たくさん行動をしたら、「なんで『やりたいことがない』なんてことで悩んでたんだろう!」と笑えるようになるはずです。
というか、「やりたいこと」がない自分に安心してない?
ごめんなさい、最後に毒舌を吐きます。
「やりたいことがない」ことがないと言っている人。
「やりたいことがない」ことを言い訳にしていません?
①「やりたいことがない」から、今の仕事にやる気が出なくても仕方がない。だってまだ自分は、本当に心から「やりたいこと」に巡り会えていないんだから!
あるいは
②「やりたいこと」はあるけど、あまりにスケールが大きすぎて叶わぬ夢なだけ。だから、もっと現実的に「やりたいこと」を見つけていきたいの!
みたいな。
「やりたいことがないから見つけなければいけない」と自分が思っているうちは、いつまでもいつまでも旅を続けることができます。
いろんな仕事を転々としながら、大した理由もなく1ヶ月くらいで辞めたりして、仕事が続かない理由を「自分がやりたいことじゃなかったから」にすることができる。
仕事がつまらなくても、やりがいがなくても、「やりたいことじゃないから仕方がない」と思うことができる。
それは、苦しい一方で、甘い言い訳でもあります。
そして、「やりたいこと」はあるけど「叶わぬ夢」だと思っている人は、たぶんそこまで「やりたいこと」じゃない可能性が高い。
何故なら、行動に移せていない「やりたいこと」は、ただの「願い事」に過ぎないからです。
「夢は、夢のままのほうが美しい」とはよく言ったもので、煌びやかに見える芸能人やYouTuberなどの仕事も、いざ目指そうと思うと泥臭い努力が待ち受けています。
苦汁をすすってなお、灯火が消えなければ、それは「やりたいこと」だと思って、泥臭く追いかけるべきだと思います。
ここまで読んできた人にはおわかりかと思いますが、「やりたいこと」ってどこかにポロッと落ちているものじゃないです。
やりたいことは、つくるもの。
目の前のことを一生懸命やって、多くの情報を集めて、自ら新しい環境に飛び込んでいって、いろんな経験をして自分で「つくっていく」ものなんです。
- 99%の人にとって「やりたいこと」は必要ない。
- 「やりたいこと」よりも「上手」と言われる、ストレスを感じない「できること」を探そう
- 好きだから没頭するのではなく、没頭するから好きになる。目の前のことに没頭しよう
- 仕事の「捉え方」を変えて、自分の「原動力」を知り、自分でやり甲斐を作っていこう
- 手と足を使って情報を集め、たくさん行動をして経験を積んでいこう
- 「やりたいこと」は見つけるものでなく、「つくるもの」
現実は行動でいくらだって変えていける
さて、ここまでエラそうに長々と話してきましたが、私も「やりたいこと」が見つからなくて、もがきにもがいたひとりです。記事内に、いくつか書籍が出てきたと思いますが、それが何よりの証拠です。
「やりたいこと」がわからないから、先人の教えを乞うために、大量の本を読みました。
「やりたいこと」がわからないから、いろんな人に話を聞きにいきました。
「やりたいこと」がわからないから、さまざまな習い事や趣味に没頭しました。
なので、この記事のタイトルのアンサーとなるのは、「『やりたいこと』は『行動』すればわかる」ということになります。
現実は、「行動」でしか変えることができません。
しかし、こうして記事を読みにきてくださったり、私に相談してくださるのは、少しでも「現状を変えたい」という思いがあるからだと思います。
どうか、悩むだけではなく、悩みながら行動に移してください。
私はあくまで背中をそっと押すだけで、自分の人生を変えていくのは他ならぬあなたです。
この記事を読んだあなたの心が少しでも動き、明日への一歩へと繋がることを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考文献一覧
働き方に迷ったら。
ぜひ、読んでみてください。
- 『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』 / 北野唯我
- 『ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく』 / 堀江貴文
- 『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』 / 村上昇
- 『マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』 / エミリー・ワプニック
- 『お金と時間の悩みが消えてなくなる 最高の時短』 / 米山彩香